先日新シーズンからの新しい採点基準が発表されました。
Communication No.2323
Communication No.2324
2020.6.19 追記
新シーズンから採用されるはずだった採点基準は、新型コロナウィルスによりリンクや練習の再開に遅れが生じている事、各国連盟からのフィードバック等により保留となりました。
上記のファイルはNo.2323が『Suspened』と書かれた表紙だけに差し替わり、No.2324は削除されてしまっています。
クワドの点数調整や『稚拙な離氷』の明確化など、十全ではありませんが良い改定だと思ったのですが、残念です。
ルール変更がなくなってしまった事で、この記事は何の意味もなくなってしまったわけですが、せっかくなので残しておきます。
2021シーズン以降、復活することを期待して……。
これによりいくつかのジャンプの基礎点が変更になりました。
4Lz 11.5 → 11.0
4Lo 10.5 → 11.0
3Lz 5.9 → 5.3
4回転はルッツ、フリップ、ループが同じ点数に、3回転はルッツとフリップが同じ点数になります。
基礎点を元に算出されるGOEも変わる事となります。
ざっくり言ってルッツの優位性が小さくなる訳です。逆に跳ぶ人が少なく、4回転に限ってはルッツより難しいとも言われるループがお得になります。
というわけで実際にどんな感じになるのか、計算してみました。
使ったのは、2019年のGPFのプロトコルです。
男子SP
ネイサン・チェン
4Lz 15.94(11.50, 4.44) → 15.24(11.00, 4.24) 差分 0.7 ↓
羽生結弦
なし
男子フリー
ネイサン・チェン
4Lz 15.77(11.50, 4.27) → 15.09(11.00, 4.09) 差分 0.68 ↓
3Lz+3T x 12.96(11.11, 1.85) → 12.12(10.45, 1.67) 差分 0.84 ↓
フリー合計 1.52 ↓
羽生結弦
4Lo 14.55(10.50, 4.05) → 15.24(11.00, 4.24) 差分 0.69 ↑
4Lz 15.44(11.50, 3.94) → 14.77(11.00, 3.77) 差分 0.67 ↓
3Lz 7.50(5.90, 1.60) → 6.74( 5.30, 1.44) 差分 0.76 ↓
フリー合計 0.74 ↓
羽生の点数を見れば分かりますが、4Loと4Lzを同時に起用し、同程度のクオリティで跳ぶ事が出来れば変更の影響はほとんどない事になります。
またネイサンは合計では 2.22 のダウンです。これを大きいとみるか小さいとみるか……。
ルッツを多用する選手に取っては厳しい変更である事は間違いないです。
ということで、一番影響を受けそうなシェルバコワと比較としてコストルナヤも計算してみました。
女子SP
コストルナヤ
3Lz 7.92(5.90, 2.02) → 7.12(5.30, 1.82) 差分 0.80 ↓
シェルバコワ
3Lz+3Lo x 13.57(11.88, 1.89) → 12.73(11.22, 1.51) 差分 0.84 ↓
女子フリー
コストルナヤ
3Lz x 8.34(6.49, 1.85) → 7.50(5.83, 1.67) 差分 0.84 ↓
シェルバコワ
4Lz+3T 19.15(15.70, 3.45) → 18.50(15.20, 3.30) 差分 0.65 ↓
4Lz < 8.81(9.20, -0.39) → 8.42(8.80, -0.38) 差分 0.39 ↓
3Lz+3Lo x 12.72(11.88, 0.84) → 11.98(11.22, 0.76) 差分 0.74 ↓
3Lz x 8.18(6.49, 1.69) → 7.34(5.83, 1.51) 差分 0.84 ↓
フリー合計 2.62 ↓
コストルナヤ 162.14 - 0.84 = 161.30
シェルバコワ 162.65 - 2.62 = 160.03
となり、フリーの順位が入れ替わる結果になりました。
基礎点の変更はインパクトがあり大きく報道されましたが、もっと影響しそうなのがGOEの評価基準です。
これまでざっくりと『稚拙な踏切』となっていたものが、具体的に例が挙げられました。
これに引っかかりそうな選手は、男女、国を問わず結構います。
こういった選手達は、つまりこれまでもらえていた点数をもらえない事になります。今までがお目こぼしの状態だっただけなのですが、点数が出なかった時にその理由を解説者がちゃんと伝えられるかどうか……。
それ以前にジャッジたちがちゃんと評価出来るかどうか……。
今のところ試合が出来るのかさえも不透明な状況ですが、こういった部分も注目です。